先に逝くもの [心境]
このところ、わが身には、訃報続きだった。
そして今朝。
家族を相次いで病気で失った我が家から、旅立つ者がいる。
亡くなった家族も可愛がっていた愛犬だ。
すでに17歳を超える。
長生きのほうだが、看取ったほうとしてはもっと長生きさせたかったと思う。
犬の悪性腫瘍という診断を受けてから、3年ほど前からオムツをするようになり、自力では立てなかった。
この半年ほどはさらに悪化して、最近は、固形物は食べられなかった。
流動食やジュース果汁などで生きながらえさせていたが、細くなって骨皮状態になっていた。
それでも、口に運ぶと必死でのどに通す姿がいとおしかった。
体の上から触っても見ても明らか、体内で腫瘍部分が増えて、ついには体の皮膚から、体内の液がしみ出るようになった。
傷口に細胞組織を再生させるという物を貼り、カバーしていたが、防水フィルム・ガーゼ・包帯などではおさまらなくなった。
首回りや、肩・腰骨あたりだけでなく、顔面部分からも裂けて流れ出してきた。
口の中はただれて奥歯がぐらつき、抜け落ちるのに2週間かかった。
寝た姿勢で食べるので、胃が悪くなり、吐き戻しが激しく、1日中、朝も昼も夜も関係なく泣け叫んだ。
動物病院で処方された胃薬を飲ませた。胃が多少良くなっても病症は進んだ。
この1週間は、のどから絞り出すような声で低く弱々しく唸って、介助を求めた。
頻繁に体の向きを換え、オムツ交換をして、傷口のガーゼを張り替えてフードプロセッサーで流動食を作り食べさせ、水を飲ませ、からだをふいて・・・。
今朝、逝った。
きのうから舌を出して喘ぎ始めたが、見えない目で聞こえない耳で、苦しい息でも必死に生きようと頑張った。
オムツを変えて、哺乳瓶で水を飲ませたが、こぼすだけで無反応。好きなアップルジュースも飲めない状態だったが、顔の向きを傾けて流し込んだら、こぼしながらほんの一口飲んだ。
もっと好きなカルピスならば飲む気がでると思い、哺乳瓶で少し流し込んだら、こぼすほうが多いが、ゴックンと一口、飲み込んだ。
これで少し元気になるかと思い、哺乳瓶に新たに入れて持っていったら、すでに、もう息がとまっていた。
時間がたち、だんだん体が冷えていき、それでも、あきらめきれずに体を触っていたら、動いたような気がした。仮死状態?かと思ったが違った。自分が犬の体に振れたことで、自分自身の手首の、心臓の鼓動が響いてくると気が付いた。
犬は生き返らなかった。
明日、火葬場で骨になる。今晩は、今まで通り、そばにいてくれる。